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主題は『今昔物語集こんじゃくものがたりしゅう』や『宇治拾遺物語うじしゅういものがたり』が伝える、平安中期の貴族・藤原保昌ふじわらのやすまさと大盗賊・袴垂はかまだれの物語。肌寒い秋の夜、笛を吹きつつ歩く保昌の衣を奪おうと後をつけながら、なぜか恐ろしくて手が出せない袴垂はかまだれ。何度も斬りかかろうとし、足音たかく駆け寄っても、相手はまったく動じない。ついにはその家に連れていかれ、衣をもらったうえに、身の安全まで諭さとされる始末。風になびく薄すすきや狩衣かりぎぬの袖が強調する斜めの動き。それとは逆向きに身がまえる盗賊と、直立する貴族のポーズの対比が、画面に緊張感を生んでいます。刀をにぎる袴垂はかまだれに、ちらと眼まなこを開くだけの保昌。そんな細部にも、名高い盗賊を震えあがらせた“豪ごうの者もの”がたくみに表現されています。(坂本恭子)
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主題は『今昔物語集』や『宇治拾遺物語』が伝える、平安中期の貴族・藤原保昌と大盗賊・袴垂はかまだれ の物語。肌寒い秋の夜、笛を吹きつつ歩く保昌の衣を奪おうと後をつけながら、なぜか恐ろしくて手が出せない袴垂はかまだれ 。何度も斬りかかろうとし、足音たかく駆け寄っても、相手はまったく動じない。ついにはその家に連れていかれ、衣をもらったうえに、身の安全まで諭さと される始末。すすき や狩衣かりぎぬ の袖が強調する斜めの動き。それとは逆向きに身がまえる盗賊と、直立する貴族のポーズの対比が、画面に緊張感を生んでいます。刀をにぎる袴垂はかまだれ に、ちらと眼まなこ を開くだけの保昌。そんな細部にも、名高い盗賊を震えあがらせた“豪ごう の者もの ”がたくみに表現されています。
風になびく薄
(坂本恭子)