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世話物の浄瑠璃じょうるり義ぎ太夫だゆう節ぶし『冥めい途どの飛脚ひきゃく』(近松門ちかまつもん左ざ衛え門もん作)の「新口村」の場面。大坂の飛脚問屋の養子忠兵衛ちゅうべえは、遊女の梅川うめかわになじみを重ね、梅川を身み請うけするために公金に手をつけます。忠兵衛は梅川と自分の故郷、大和新口村に落ちのび、百姓家に身を隠します。雨の吹きこむ百姓家の竹連たけれん子じ越ごしに、たまたま通りがかった父の姿を見やる忠兵衛のうしろで、梅川は袖で涙をぬぐうしぐさ。忠兵衛と梅川が、役者絵の趣おもむきで描かれています。梅川の背後には、障子の反ほ古ご紙がみに見立てて、この場面の次のくだりも記されています。
涙の雨の よこ時雨しぐれ 袖にあまりて 窓をうつは あゝ降つて来たさうな と 西うけの竹れんじ 反古障子をほそ目に明けて 見やる野風の畠道。(口語訳)涙の雨は袖からあふれ、折から横時雨が窓を打つ。「おや、降ってきたようだ」(忠兵衛)と、反古紙を貼った障子を細目に明けて、西向きの竹格たけごう子し越ごしに見やると、風吹く農道
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世話物の浄瑠璃義太夫節『冥途の飛脚』(近松門左衛門作)の「新口村」の場面。
大坂の飛脚問屋の養子忠兵衛は、遊女の梅川になじみを重ね、梅川を身請けするために公金に手をつけます。忠兵衛は梅川と自分の故郷、大和新口村に落ちのび、百姓家に身を隠します。雨の吹きこむ百姓家の竹連子越しに、たまたま通りがかった父の姿を見やる忠兵衛のうしろで、梅川は袖で涙をぬぐうしぐさ。忠兵衛と梅川が、役者絵の趣で描かれています。梅川の背後には、障子の反古紙に見立てて、この場面の次のくだりも記されています。
涙の雨の よこ時雨 袖にあまりて 窓をうつは あゝ降つて来たさうな と 西うけの竹れんじ 反古障子をほそ目に明けて 見やる野風の畠道。
(柏木智雄)(口語訳)涙の雨は袖からあふれ、折から横時雨が窓を打つ。「おや、降ってきたようだ」(忠兵衛)と、反古紙を貼った障子を細目に明けて、西向きの竹格子越しに見やると、風吹く農道